恐怖指数(VIX)とは|意味・読み方・活用の勘所と限界を整理

恐怖指数(VIX)とは|意味・読み方・活用の勘所と限界を整理

恐怖指数(VIX)とは|意味・読み方・活用の勘所と限界を整理

目次

概要

  1. VIXの基礎(何を、誰が、どうやって測っている?)
  2. 数字の目安と典型的な相場環境
  3. 株式・為替との関係(伝わり方のイメージ)
  4. どんな場面で参照される?(活用のヒント)
  5. よくある誤解と限界(注意しておきたいポイント)
  6. 歴史的な主なスパイクの例
  7. 関連指標(国内版・他資産のボラ指数)
  8. まとめ

概要

VIX(Volatility Index)は、しばしば「恐怖指数」とも呼ばれる、市場参加者が見込む今後30日間の価格変動(インプライド・ボラティリティ)を数値化した指標です。シカゴ・オプション取引所(Cboe)が、S&P 500オプションの価格情報をもとに算出・公表しています。数値が高いほど「先行きの振れ幅を大きく見込む参加者が多い」状態、低いほど「落ち着いた見通し」が示唆されます。

1. VIXの基礎(何を、誰が、どうやって測っている?)

  • 対象:S&P 500の複数満期・複数ストライクのオプション
  • 算出主体Cboe(Chicago Board Options Exchange)
  • 期間向こう30日間相当のインプライド・ボラティリティ
  • イメージ:オプション価格に織り込まれた将来の不確実性を、銘柄個別ではなく米大型株の“市場全体”として要約した温度計
仕組みの概略:採用するオプション範囲を選定 → 各限月・権利行使価格に重み付け → 所定の式で統合して指数化。

2. 数字の目安と典型的な相場環境

  • 10〜20未満:比較的安定。ニュースに対する耐性が高いことが多い。
  • 20以上警戒感が意識されやすい。イベントや不確実性が材料に。
  • 30以上不安定。価格の振れが大きくなりやすい局面。
  • 40以上パニックに近い状態。流動性の薄さや価格飛びも起こり得る。
  • 10未満過度な楽観を示唆することがあり、その後の反動に注意。

※上記はあくまで目安です。相場環境や金利水準によって「高い/低い」の意味合いは変わります。

3. 株式・為替との関係(伝わり方のイメージ)

  • 株式との関係:VIXは一般にS&P 500と逆方向に動きやすい(相関は常に一定ではありません)。
  • 為替への波及:不確実性の上昇(VIX上昇)局面では、グローバルなリスク回避が意識され、USDやJPYなどの流動性が厚い通貨が選好される場面がみられます。ただし相場の“レジーム”次第で挙動が異なるケースもあります。

4. どんな場面で参照される?(活用のヒント)

  • 市場環境の“温度感”把握:決算・政策・地政学などイベント前後の不確実性の高まり/剥落を俯瞰。
  • リスク管理のパラメータ:ポジションサイズ、損益許容、ヘッジコスト(オプション・保険的手段)の水準感を検討する際の参考値
  • 資産横断の見通し整合:株式・為替・クレジット等でボラティリティ認識が整合的かを点検。
ここでの説明はあくまで情報の使い方の一例であり、特定の取引や手法を推奨するものではありません。

5. よくある誤解と限界(注意しておきたいポイント)

  • 売買シグナルではない:VIXの高低だけで方向性を断定できません。背景(イベント・流動性・金利)の読み替えが必要。
  • 米株中心の温度計:米国大型株オプションに基づくため、他地域・他資産の不確実性を完全には反映しない
  • スパイクの性質:VIXの急騰は短期で反転することも珍しくありません。数字の絶対値よりも持続性に注目。
  • 閾値の相対性:同じ“20”でも、金利・マクロ環境が違えば意味合いが異なることがあります。

6. 歴史的な主なスパイクの例

  • 2008年10月:世界金融危機 — 過去最高の 89台を記録。
  • 2020年3月:新型コロナ・パンデミック80台半ばまで急騰。
  • 1998年:ロシア危機/LTCM2015年:中国減速懸念2018年:米金利・景気不安 などでも大きく上昇。
  • 2022年:ロシアのウクライナ侵攻前後30台に乗せる局面。
  • 2025年春:通商関連の緊張報道60台を一時付けた場面が観測されました。

(いずれも参考情報。水準は日々更新され、同じ数字でも背景はイベントごとに異なります。)

7. 関連指標(国内版・他資産のボラ指数)

  • 日経平均VI(日本版“恐怖指数”):日経平均オプションのインプライド・ボラを指数化。日本株の不確実性に着目。
  • その他のボラ指数:米ナスダック100に着目した指標や、金利市場のボラティリティ指数など、資産ごとの“温度計”が存在します。

8. まとめ

  • VIXは「将来30日間の不確実性」を要約する米株ベースの指標。
  • 数値の解釈は文脈依存で、目安(10〜20安定/20超は警戒感/30超は不安定/40超は危機的)は絶対基準ではない
  • 株式・為替へは複数の経路で波及し得るが、レジームにより反応は変わる。
  • 単体での売買判断ではなく、リスク管理や環境把握の補助線としての活用が現実的です。

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よくある質問(Q&A)

Q1. VIXが20を超えたら必ず下がる(または上がる)と考えてよいですか?

A1. いいえ。20は一般的に警戒の目安ですが、金利やイベント次第で意味合いが変わります。単独の閾値で方向を断定せず、背景と持続性をあわせて確認してください。

Q2. VIXは為替の売買シグナルになりますか?

A2. 直接の売買シグナルではありません。市場の“不確実性”を示す補助情報として、ポジションサイズやヘッジ水準の検討に用いるのが現実的です。

Q3. VIX先物や連動商品と「現物VIX」は同じ動きをしますか?

A3. 異なることがあります。先物は期先の価格で、コンタンゴ/バックワーデーションの影響を受けます。現物指数(スポット)と乖離する点に注意が必要です。

Q4. VIXが低いのに相場が急落するのはなぜ?

A4. 低VIXは安定を示す一方、想定外のショックには弱い面があります。ボラは非対称に跳ね上がりやすく、イベントの性質や流動性の変化で急騰することがあります。

Q5. 日本株を見るときはVIXと日経平均VIのどちらを使えばよいですか?

A5. 両方参照に価値があります。VIXはグローバルなリスクムード、日経平均VIは日本株固有の不確実性を映しやすい傾向があります。整合性と乖離の両面を確認しましょう。

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