基軸通貨とは|役割・歴史・取引の仕組み・市場への影響をやさしく整理
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基軸通貨とは|役割・歴史・取引の仕組み・市場への影響をやさしく整理
目次
概要
- 基軸通貨の定義
- 基軸通貨の主な特徴(安定性・信認・利用範囲)
- FX実務での位置づけ(ドルストレート/クロスレート)
- 歴史の要点(ポンドからドルへ/ブレトンウッズ/変動相場制)
- 世界経済への影響(流動性と政策対応の例)
- 将来の交代可能性と必要条件
- よくある質問(Q&A)
- まとめ
概要
基軸通貨は、国際的な決済や資金調達、外貨準備で中核的な役割を担う通貨を指します。現在は米ドルがその地位にあり、貿易・金融取引・準備資産など幅広い局面で使われています。
1. 基軸通貨の定義
国境を越える取引で価格表示・決済・準備保有の基準として最も広く利用される通貨を指します。為替市場や国際金融のインフラに深く組み込まれていることが特徴です。
2. 基軸通貨の主な特徴(安定性・信認・利用範囲)
- 通貨価値の相対的な安定:各国の外貨準備で広く保有され、厚い需要に支えられています。
- 高い信認と利便性:発行国の経済規模、法制度、深い金融市場・決済インフラが背景。流動性が厚く、取引相手を見つけやすい。
- 幅広い用途:国際貿易の請求通貨・決済通貨、国際金融取引、準備資産など。為替市場では米ドルが常に片側に立つ取引が大半を占めることが確認されています(BISの三年毎調査でも同趣旨の結果が示されています)。
3. FX実務での位置づけ(ドルストレート/クロスレート)
- ドルストレート:米ドルと他通貨のペア(例:EUR/USD、USD/JPY)。市場流動性が厚く、スプレッドが相対的に狭い傾向。
- クロスレート:米ドルを含まないペア(例:EUR/JPY)。実務上は二本の対ドル取引(EUR/USD と USD/JPY など)を組み合わせて価格が形成・ヘッジされるのが一般的です。
4. 歴史の要点(ポンドからドルへ/ブレトンウッズ/変動相場制)
- ポンドの時代:産業革命と金本位制を背景に、第二次大戦前後まで英ポンドが国際金融の中心。
- ドルの台頭:戦後、ブレトン・ウッズ体制(1944)で「金1オンス=35ドル」をアンカーに各国通貨がドルに連動。
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体制の終焉:1960年代の経常収支悪化などを経て、1971年の金兌換停止(ニクソン・ショック)で固定相場は維持困難に。日本を含め各国は1970年代に変動相場制へ移行。
その後も米ドルは市場の厚みと制度面の強みから、基軸通貨としての地位を保っています。
5. 世界経済への影響(流動性と政策対応の例)
多くの中央銀行が外貨準備として米ドルを保有し、国際決済にも用いられます。
一方で、基軸通貨の流動性が逼迫すると市場機能に大きな影響が及び得ます。たとえば2008年秋には、各国中銀がFRBとのドル・スワップラインを通じて資金供給を行い、国際金融市場のドル調達を支えた経緯があります。
6. 将来の交代可能性と必要条件(一般論)
基軸通貨は不変ではありません(歴史的にポンド→ドル)。ただし交代には、一般に次のような条件が求められると考えられます。
- 大規模で開かれた金融市場(深い流動性・多層の参加者)
- 強固な法制度と信認(契約・財産権の保護、透明性)
- 安定したマクロ経済(物価・財政・対外バランスの持続性)
- 決済インフラとネットワーク効果(国際決済での受容度)
現時点でいずれの通貨が交代する、という指摘ではなく、一般的な要件の整理です。
7. よくある質問(Q&A)
Q1. 為替取引は必ず米ドルを介しますか?
A. 取引ペアが米ドルを含まない場合でも、価格形成やヘッジは実務上、対ドル取引を経由するケースが多いです(例:EUR/JPY ≒ EUR/USD と USD/JPY から導出)。
Q2. 米ドルの前の基軸通貨は?
A. 英ポンドです。工業化と金本位制を背景に国際的中心を担いました。
Q3. 基軸通貨は将来変わる可能性がありますか?
A. 歴史上、通貨の中心は移り変わりがあります。もっとも、交代には前述の要件が必要で、短期的に決する問題ではありません。
Q4. ドルストレートとクロスレートの違いは?
A. ドルストレートはUSDを含むペア、クロスレートはUSDを含まないペア。流動性やスプレッドは一般にドルストレートの方が厚く・狭い傾向があります。
8. まとめ
基軸通貨は、価格表示・決済・準備の面で国際金融を下支えする存在です。現在は米ドルがその役割を担い、為替市場・貿易・資本取引の広範で用いられています。歴史的には体制の転換を経つつも、市場の厚み・制度の信頼・インフラが、基軸の地位を支える基礎となってきました。解釈や評価は、常に他の経済・政策情報と併せて冷静に行うことが大切です。
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